犬の原発緑内障|失明を防ぐために隅角インプラントが重要な理由 - 千葉seaside動物医療センター|習志野市津田沼の動物病院(千葉シーサイド)
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犬の原発緑内障|失明を防ぐために隅角インプラントが重要な理由

眼科 日下部 浩之
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犬の原発緑内障とは?

緑内障とは、眼圧(眼の中の圧力)が上昇することで網膜や視神経が障害され、視覚障害を引き起こす病気です。

眼の中では、「眼房水(がんぼうすい)」と呼ばれる透明な液体が常に作られています。眼房水は眼の中を循環したあと、主に「隅角(ぐうかく)」と呼ばれる排水路から眼の外へ排出されます。
通常は、眼房水が「作られる量」と「排出される量」のバランスによって、眼圧は一定に保たれています。

原発緑内障は「眼の排水路」に異常がある病気

犬の原発緑内障では、眼房水の排水路である隅角に生まれつき構造的な異常があり、病気の進行に伴って眼房水を十分に排出できなくなります。
眼房水が眼の中にたまることで眼圧が上昇し、高い眼圧によって網膜や視神経が障害されます。
この仕組みは、お風呂の「蛇口」と「排水溝」をイメージすると分かりやすくなります。
蛇口から水が出ていても、排水溝から同じ量の水が流れていれば浴槽から水はあふれません。しかし、排水溝が詰まって水が流れなくなると、浴槽には次第に水がたまっていきます。
原発緑内障もこれと同じで、

蛇口 = 眼房水を作る場所
浴槽 = 眼球
排水溝 = 隅角

と考えることができます。
つまり、犬の原発緑内障は、単純に「眼圧が高くなる病気」ではなく、眼房水の排水障害によって眼圧が上昇する病気です。

犬の原発緑内障は失明につなが

眼圧が高い状態が続くと、眼の奥にある網膜や視神経に不可逆的な障害が生じます。
網膜や視神経は、眼から得た情報を脳へ伝えるために重要な組織です。一度大きな障害を受けると、たとえその後に眼圧を正常まで下げることができても、失われた視覚を元に戻すことはできません。
そのため、犬の原発緑内障の治療では、単に眼圧を下げるだけではなく、網膜や視神経が不可逆的なダメージを受ける前に、いかに早く眼圧をコントロールするかが非常に重要になります。
特に柴犬をはじめとする原発緑内障の好発犬種では、急激な眼圧上昇を起こし、短期間で視覚を失ってしまうことがあります。
犬の原発緑内障は、視覚を守るために早期発見・早期治療が極めて重要な疾患です。

原発緑内障の緊急性と内科治療の限界について

犬の原発緑内障は「時間との勝負」

犬の原発緑内障では、眼圧が高い状態が続くことで網膜や視神経が障害され、短期間で不可逆的な視覚障害に至ることがあります。
一度大きなダメージを受けた網膜や視神経を回復させることは、現在の獣医療ではできません。そのため、視覚を守るためには、できるだけ早く眼圧を正常化することが重要です。
実際に、日本の柴犬65頭104眼を対象とした研究では、症状が現れてから72時間以内に受診した眼では86.7%で視覚が残っていたのに対し、72時間を超えて受診した眼では44.1%まで低下していました。
つまり、犬の原発緑内障は「数日様子をみてから治療を考える病気」ではありません。
当院でも、発症からわずか半日程度で視覚を失った症例を経験しています。
そのため当院では、犬の原発緑内障を緊急性の高い眼科疾患として捉え、視覚が残っている場合には速やかに治療を開始することが重要だと考えています。

内科治療だけでは長期的な視覚維持が難しい疾患

原発緑内障を発症した直後には、まず点眼薬や内服薬を用いて眼圧を下げる内科治療を開始します。しかし、これは視覚を守るために眼圧を速やかに下げる応急処置であり、長期間にわたって病気をコントロールする根本的な治療ではありません。柴犬の原発緑内障を対象とした研究では、初診時に視覚が残っていた眼であっても、内科治療のみを行った場合、12か月後に視覚を維持できていた割合はわずか7.7%でした。さらに、視覚を失うまでの期間の中央値は1.7か月と報告されています。 この結果からも、犬の原発緑内障は内科治療だけで長期間管理できる疾患ではなく、視覚を維持するためには早い段階から外科治療を含めた治療戦略を検討することが重要であることが分かります。

当院での隅角インプラント術の長期予後について

当院では、犬の原発閉塞隅角緑内障に対して、Ahmed緑内障バルブを用いた隅角インプラント術を積極的に実施しています。

隅角インプラント術は、眼の中にたまった眼房水を眼の外へ排出するための「新しい排水路」を作る手術

手術では、シリコン製の細いチューブを眼の中へ留置し、眼房水をインプラント本体へ導きます。排出された眼房水はインプラント周囲の組織から少しずつ体内へ吸収されることで、眼圧を低下させます。

良好な長期予後の鍵は、「早期手術」と「積極的な術後管理」

近年では、手術を行うだけでなく、術後早期から眼房水の産生を抑える治療と十分な抗炎症治療を組み合わせることで、インプラントの機能をできるだけ長く維持することを重視しています。
当院では、柴犬の原発緑内障を対象に、隅角インプラント術後の長期成績について検討しました。その結果、術後1年では100%、約2年間の長期経過でも約90%で視覚を維持しており、良好な長期予後が得られています。
これらの結果から、適切なタイミングで隅角インプラント手術を行い、術後も積極的に眼圧と炎症を管理することで、犬の原発緑内障において長期間にわたり視覚を維持できる可能性があると当院では考えています。
もちろん、すべての症例で視覚を維持できるわけではなく、角膜疾患、白内障、網膜疾患など、眼圧とは別の原因によって視覚を失うこともあります。
それでも、内科治療のみでは短期間で視覚を失うことが多い犬の原発緑内障において、隅角インプラント術は視覚を長期的に守るための重要な治療選択肢と考えています。
 

投稿者プロフィール

日下部 浩之
日下部 浩之 Hiroyuki Kusakabe (眼科)
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