神経科
neurology
神経科では脳や脊髄とそれらを守る頭蓋骨や脊椎、末梢神経 – 筋肉対象に診察を行います。致命的な疾患や生活の質(QoL)を左右する疾患も多い分野です。神経学的検査や画像検査などをもとに治療方針を組み立て、救命はもちろん、その後のQoLまで見据えた医療をご提案いたします。ご自宅での症状の動画をご持参頂けると診察させていただく上で大変助かります。
このような症状はお早めにご相談ください
※症状をタップすると詳細が表示されます。
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発作が起きた
てんかん発作(いわゆる発作)なのか、それ以外の症状であるかを鑑別することが診断のためには重要です。ショッキングな症状ですが、冷静に動画等の記録をすることは大切な家族を守るために重要な行動です。
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ふらつく
様々な原因が挙げられますが、意識障害がある場合や進行性に悪化する場合は緊急性が高い可能性があります。特に猫ちゃんの場合、病院では歩いてくれないことがあるため動画をご持参頂けると助かります。
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急に歩けなくなった
椎間板ヘルニアが代表的な疾患ですが、その他の神経疾患、大動脈塞栓症、腹腔内出血等の体調不良でも歩けなくなる症状がでます。いずれにしても緊急性が高いことが多くあります。
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いつもと違う動き方をする
体のどの場所がどのように「違う」のかを観察してください。犬や猫として異常な行動なのか、その子にとってはおかしな動きなのかを照らし合わせることで、病的かどうかを判断していきます。
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頭が傾く/目が揺れている
平衡感覚障害の症状です。老齢性が最も多いですが、脳梗塞等でもよく見る症状です。誤嚥や脱水に注意が必要です。
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どこかを痛がる
様々な原因がありますが、どこが痛いのか、なぜ痛いのかを分かってあげることで治療してあげられることが多いです。活動性の低下の原因が痛みであることもよくあり、痛みの症状は多岐にわたります。
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表情、性格、行動が変わった
これらの変化は大脳の異常であることが少なくありません。痛みによる行動の変化や精神的なものもあるので、症状の様子や検査を組みあせて診断をしていきます。
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頭や背中を強く打った
頭蓋骨骨折や脊椎骨折は緊急性が高く、対応の遅れ等で病態を悪化させるかもしれません。痛みが短時間で改善しない場合、麻痺がでている場合、痙攣発作や意識障害を呈している場合などは緊急性が高い事が多くあります。
検査内容
examination
行動を観察し、体を触り、動かし、光を当て、脳や脊髄、末梢神経といったどの部位に異常があるかを推定します。神経学的検査と稟告(ご家族様からのお話)を併せて、疾患を推定します。一見ただの身体検査ですが、これが不十分だとその後どのような検査に進むべきかを間違えて診断に大きな影響を与えることもあります。
MRI検査ではなく、血液検査や血圧測定が診断に必須なこともあるだけではなく、麻酔のリスク評価や治療を行う上でのリスク評価をするためにとても重要です。すべての症例で、すべての検査が必要なわけではありませんが、ミニマムデータベース(最低限必要な情報)の収集は合併症や見落としから動物を守るために必要です。
基本的には全身麻酔が必要になりますが、脳や脊髄を見るためにはMRI検査、骨や胸腔内/腹腔内臓器を見るにはCT検査が大きな力を発揮してくれます。特に骨に囲まれた脳や脊髄はMRI検査以外で得られる情報は限られているため神経科診療とMRI検査はセットで考えられることも多いです。ただし、末梢神経は画像検査ではあまり見えなかったり、MRI検査は限られた空間の画像検査になるため、検査前に適応を見極めることもとても重要です。
後頭部もしくは腰部に針を刺し、脳脊髄液を採取します。主に脳炎の診断に重要な検査になりますが、動物の状態によっては実施禁忌がある検査になります。ほとんどの場合MRI検査と併せて実施、評価を行います。
末梢神経や筋肉の機能を評価する検査です。神経学的検査以外で末梢神経を調べるためには必要な検査になります。神経、筋生検(一部採取し病理組織検査を実施すること)とセットで実施することも多いです。
犬や猫ではてんかん発作の診断に使われることがほとんどです。発作が本当にてんかん発作(大脳に異常がある)なのか、重積発作(止まらないてんかん発作)は起きていないかを見極めることができます。
代表的な疾患
disease
大脳にトラブルが起きててんかん発作を起こしてしまう状態です。特発性(原因不明)てんかんだけでなく、腫瘍や脳炎、その他の疾患による繰り返されるてんかん発作もてんかんと言われます。まずは原因の特定が重要になります。重積発作や群発発作と呼ばれる止まらない、あるいは1日の間で繰り返すような発作がある場合には緊急性が高いです。基本的には高てんかん発作薬と呼ばれる薬を使用して、てんかん発作をコントロールします。
脳や脊髄などに炎症が起きる疾患群です。国内の小型犬の場合、ほぼ自己免疫性(自己の免疫が自己の細胞を攻撃してしまう)の病態であり、これは原因不明脳炎(MUO)と言われます。かつては肉芽腫性脳炎や壊死性脳炎と診断されていましたが、現在では多くの場合それらを包括したMUOという名称で診断を下します。一生を左右する疾患であり、発症から治療開始までの期間が重要な疾患です。
様々な種類の脳腫瘍があり、腫瘍の種類や発症部位により治療方針や予後が大きく左右されます。治療は腫瘍と闘う治療法(手術、抗がん剤、放射線)と腫瘍と付き合う治療法(緩和治療)に大別されます。
近年積極的な治療の選択肢も選べる様になってきましたが、動物の状況、ご家族の状況により何が最も良いかを相談しながら治療方針の決定を行います。
背骨のクッションかつ支持の役割を持つ椎間板が飛び出し、脊髄に挫傷や圧迫といったダメージを起こす病気です。頸部でも胸腰部でも起こり、痛みだけの症状から完全麻痺まで重症度の幅が広いです。多くの場合、歩けない場合には手術適応となり、肢の動きが無い完全麻痺の場合は緊急性ありと判断されます。重症度だけででなく、今後の生活を見据えて様々な要因を加味した上で治療方針を提案します。
一般的な椎間板ヘルニアとは異なり、重症度にかかわらず手術適応外となる椎間板ヘルニアです。
非圧迫性のヘルニアは圧迫による脊髄損傷がごく軽度、あるいは存在せず、挫傷により脊髄障害がおこります。手術により摘出出来る椎間板が存在しないため手術適応外となります。
水和髄核による椎間板ヘルニアは圧迫と挫傷が起こるもののヘルニア(脱出)した椎間板の変性が無く比較的短期間で吸収されるため手術適応外となります。実際にこの水和髄核のタイプは保存療法と手術を実施した時の治療成績が全く同じであり、手術により改善しているものではないと評価されています。ただし、改善に乏しい場合には圧迫の残存(吸収されずに残っているヘルニア)がないかMRI検査で確認することもあります。
非圧迫性、水和髄核どちらも症状からは通常の椎間板ヘルニアとの区別が困難なため、MRI検査での診断が必要です。
若齢の小型犬に多い疾患であり、歩行異常や頚部痛がきっかけで診断されることが多いものの、突然の激しい疼痛が発作と間違われることもあります。
第一頚椎(環椎)と第2頚椎(軸椎)の安定性が生まれつき悪く、骨がずれることによる圧迫や挫傷が脊髄を損傷します。
首頚部に強い力がかかった瞬間に強い脊髄損傷が起き、呼吸筋麻痺まで呈した場合には最悪死亡してしまうこともあるため、十分な注意が必要です。
長期的な目線で安定した生活を送るためには手術が必要ですが、リスクも伴います。合併症軽減のためにまずは保存療法を選択し、その後落ち着いた状況で手術進むこともあります。診断時の重症度や年齢、体重等様々要素を考察して治療方針を組み立てる必要があります。
環軸背側バンドや環椎後頭骨オーバーラップとともに頭蓋頸部移行部異常というグループに含まれる疾患です。
生まれつき後頭骨の形態異常があり、小脳が本来のスペースにうまく収まらない(キアリ様奇形)→脳脊髄液という水の流れが悪くなり脊髄に水が溜まる(脊髄空洞症)といった病態で併発していることが多くあります。知覚過敏(頸部や顔面の痒み)や疼痛、ふらつきなどの症状を出すことがあります。しかし無症状であることも多く、検査結果の解釈は経過とともに行われます。
基本的には根治出来ない疾患ですので、上手に付き合っていく方法をご相談しながら治療を進めることになります。
主に中耳/内耳、聴神経、延髄、小脳のいずれか、もしくは複数に異常があるときに起こる神経疾患です。目が揺れる(眼振)、頭が傾く(捻転斜頚)、特に上下運動時にふらつく、ひっくり返ってしまって歩けないなどが典型的な前庭障害による症状です。中耳炎/内耳炎、老齢性、脳炎、脳腫瘍や脳梗塞以外にもホルモンの影響を考えることもあり、原因は多岐に及びます。画像検査のみではなく、年齢や犬猫種、臨床経過も重要な情報になり、麻酔下での検査に進むかどうかの判断がとても重要です。特に脳腫瘍や脳炎の場合、延髄という呼吸中枢などが存在する重要な場所に病変が及んでいる事があるため、MRI検査前に麻酔リスクの評価を正しく行うことも重要であると思っています。
治療介入を行うかどうか、疾患によって治療方針も大きく異なるため安易な投薬と経過観察を避けて戦略的に診断と治療を行っていく必要があります。
脳や脊髄から出てきて全身を張り巡る細い神経や筋肉またはそのつなぎ目(神経筋接合部)の疾患です。
全身の力抜けたり(運動神経)、おかしな動き方になってしまい(感覚神経)、上手に歩けなくなります。一見すると脊髄や脳の障害と区別が難しいものの神経学的検査を正しく評価することで強く疑うことが出来ます。診断には血液検査を補助に、電気生理学的検査や生検が必要になりますが、治療が難しい疾患も多くあり、専門性が要求される疾患のグループになります。
視神経〜大脳のいずれか、もしくは複数に異常があるときに起きる視覚障害を指します。眼科疾患の除外した上で疑うことがセオリーですが、脳腫瘍や脳炎に寄って引き起こされることが多く、緊急性が高かったり、治療介入時期の遅れが予後に関わります。眼科と連携をとり可能な限り早急に診断や治療に進むことになります。
治療・手術例
surgical example
主に胸腰部椎間板ヘルニアに適用される手術です。背側方から脊椎に穴を開け、脊髄を圧迫している椎間板物質を摘出します。
一般的に最重度の脊髄障害でなければ高い成功率が期待されます。時間の経過した椎間板ヘルニアなどでは摘出困難となる場合も存在しますが、その場合も椎弓を切除し脊髄にかかる圧力を減らすことで症状の改善を狙うこともできます。
状況に応じて、再発予防のための造窓術 (フェネストレーション) を同時に実施することもあります。
改善するまでの期間は個人差がありますので、経過に応じてリハビリを計画し、術後のケアも行います。
頚部椎間板ヘルニアに適用される手術です。腹側(のど側)からアプローチし、頚椎に小さい穴を空け、頚髄を圧迫している椎間板物質を摘出します。
頸部椎間板ヘルニアの術後改善率は非常に高いと言われていますが、前述のヘミラミネクトミーと異なり、いくつも合併症が存在する手術です。重篤な合併症の発生率は低いものの、致命的なものも存在するため手術時には注意をはらいながら進めていきます。
頸部椎間板ヘルニアの場合、MRI画像所見や経過によっては別の術式を選択することもあります。
環軸椎亜脱臼/不安定症で適応になります。腹側(のど側)からアプローチを行い、環椎と軸椎をピン、スクリュー、骨セメントなど複数のインプラントを用いて固定します。
小型犬の中でも体格の小さい子が罹患する事が多い疾患なため、固定される骨も小さく、全てのインプラントの設置は綿密な計画のもと行われます。周術期の死亡や術後経過の中でのインプラントの破損、後遺症の残存など合併症も存在します。手術時期の検討や術後の生活も含めて、計画、実施した上で実施し、術後も安静期間を設け定期的な検診を行います。
事故による脊椎骨折や脊椎すべり症、ウォブラー症候群などの疾患で実施されます。状況に応じてヘミラミネクトミーやベントラルスロットと同時に実施されます。
罹患部位や状況に応じて、スクリュー/ピンと骨セメントで固定したり、プレートで固定したりします。特に骨折の場合は早期の介入が重要ではあるものの、障害の重症度によっては手術による麻痺の改善が見込めず、疼痛の軽減を目的に手術を実施することもあります。
手術後にはインプラントの破綻を防ぐため安静期間が必要で、一定期間は検診を行います。
一部組織を採取し病理組織検査を行うものです。筋肉、末梢神経、脊髄、頭蓋内などで実施されますが、特に脊髄や脳の生検では合併症が問題になることがあるため、必要性を慎重に判断します。MRI検査やCT検査といった画像検査を頼りに生検部位と手術内容を計画してから実施します。
診断のための手術であり、これを行うことで症状が改善することは期待されませんが、治療に繋げるための処置になります。
主に麻痺のある症例に対してリハビリを行います。麻痺の種類や程度に応じて適しているリハビリを検討いたします。日々継続することが重要な治療になりますので、院内で行うよりもご自宅で実施いただくことがメインになります。生活スタイルや性格に合わせて計画を立て、リハビリがコミュニケーションの一つとなり、家族の関係性をより良くするために一役買ってくれることも期待しています。