犬の糖尿病性白内障について - 千葉seaside動物医療センター|習志野市津田沼の動物病院(千葉シーサイド)

犬の糖尿病性白内障について

眼科 日下部 浩之
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急速に進行する白内障と治療選択

犬の白内障にはいくつかの原因がありますが、その中でも比較的多く見られるのが 糖尿病性白内障 です。
糖尿病を発症した犬では、数日〜数週間という非常に短期間で白内障が進行することがあり、急激に視力を失うケースも少なくありません。
今回は、犬の糖尿病性白内障の特徴と治療について、最新の研究報告も交えて解説します。

白内障の原因進行の速さ合併症の起こりやすさ手術後の視力回復
遺伝性中等度ー早い中等度◎良好
糖尿病性非常に早い高い◎早期手術で良好
2次性
(網膜疾患など)
中等度中等度△限定的
加齢性ゆっくり低い◎良好

糖尿病になるとなぜ白内障になるのか?

糖尿病では血液中のブドウ糖が高い状態が続きます。
この余分な糖は、水晶体(目のレンズ)に取り込まれ、ソルビトールという物質に変換されます。
このソルビトールが水晶体の中に蓄積すると、「水晶体に水分が流入する」→「水晶体の線維が膨張する」→「レンズ構造が壊れる」といった変化が起こり、急速に白内障が進行します。
このメカニズムは犬で顕著であり、糖尿病犬の約80%が白内障を発症すると報告されています。

糖尿病性白内障の特徴

糖尿病性白内障にはいくつかの特徴があります。

進行が非常に早い

急速に進行し、短期間(数日〜数週間)で成熟白内障に進行することがあります。

※白内障のステージ分類

ステージ目の見た目見え方手術適応
初発(incipient)小さな白い点ほぼ正常経過観察
未熟(immature)白濁が広がる視力低下手術検討
成熟(mature)目が真っ白見えない手術適応
過熟(hypermature)水晶体が変性見えない+炎症(充血やしょぼつき)合併症リスク

合併症が多い

特に多いものは、①水晶体起因性ぶどう膜炎、②水晶体破嚢(水晶体破砕性ぶどう膜炎)、③続発緑内障、④網膜剥離などです。
そのため、炎症が強くなる前に、治療を検討することが重要です。

治療方法

糖尿病性白内障の治療には、①内科治療(点眼治療)、②外科治療(白内障手術)の2つがあります。
しかし、現在のところ 濁った水晶体を元に戻す点眼薬は存在しません。
点眼治療は「炎症を抑える」、「合併症を防ぐ」ことが目的となります。

白内障手術の成績

近年、糖尿病性白内障における治療成績(内科vs外科)を比較した研究が報告されています。
Lee et al.,2023(Journal of veterinary Science)では、糖尿病性白内障の犬150眼を対象に”白内障手術(超音波乳化吸引術)”と”点眼治療のみ”の治療結果を比較しています。

手術群:94.8%が視力を維持


点眼治療群:7.6%のみ視覚が部分的に回復

さらにこの研究では、手術を実施した犬の方が長期的に点眼薬の使用量も少ない傾向があることが示されています。

手術をするタイミング

とはいえ、糖尿病性白内障では 手術のタイミングが非常に重要です。
適切なタイミングで手術を行うことができれば、白内障手術の成績は良好で、高い確率で視力の回復が期待できます。
一方で、白内障が進行しすぎたり、炎症や緑内障などの合併症が生じたりすると、手術の難易度が上がり、視覚予後にも影響する可能性があります。
そのため、糖尿病と診断された場合には、白内障がすでに存在していないか、また今後進行してこないかを定期的に眼科検査で確認することが重要です。
早期に異常を発見することで、適切なタイミングで治療を行うことができ、大切な視力を守ることにつながります。
もし、糖尿病の診断を受けたわんちゃんで、
「目が白くなってきた」、「視覚が低下してきた」などの症状がある場合には早めに眼科検査を受けることをおすすめします。

Spotlight

糖尿病性白内障は、急速に進行する / 合併症が起こりやすい / 点眼治療のみでは視覚回復は困難

白内障手術によって高い視力維持率が得られることが示されている

視力を守るためには、早期診断と適切な治療タイミングがとても重要

投稿者プロフィール

日下部 浩之
日下部 浩之 Hiroyuki Kusakabe (眼科)
当院に来院される糖尿病性白内障の患者様の中には、すでに炎症や緑内障などの合併症が強く出ており、残念ながら白内障手術の適応にならないわんちゃんも一定数います。
これは、糖尿病性白内障が 非常に短期間で進行する病気であることが大きな理由です。
そのため、糖尿病と診断された場合には、できるだけ早く眼科検診を受けることをおすすめします。
早い段階で目の状態を確認することで、白内障の進行や合併症を把握し、適切な治療タイミングを検討することができます。
当院では、これまで多くの糖尿病のわんちゃんに対して、内科治療においても実績があります。
「白内障が始まっていないか心配」
「まだ血糖値が安定しないけれど、白内障手術はできるのか心配」

そのように感じられた場合は、どうぞお気軽にご相談ください。
早期の検査が、大切な視力を守ることにつながります。
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