
動物の病気について
animal diseases
[腫瘍]
〔腫瘍科〕猫のリンパ腫
リンパ腫は血液細胞の悪性腫瘍で,猫の腫瘍の中で最も発生率が多いです.また多くの悪性腫瘍は高齢に多くみられますが,リンパ腫は若齢から高齢まで幅広い年齢で発生します.
一言でリンパ腫といっても,①解剖学的(発生した場所),②腫瘍化したリンパ球の分化度合い(低分化型 vs 高分化型),③リンパ球の種類(B-cell ,T-cell , NK-cell)によって分類され,そのタイプによって臨床的挙動は変わります.
【症状】
リンパ腫は全身疾患であり,様々な部位に発生するため症状も多様です.
タイプ | 発生部位 | 症状 |
消化器型リンパ腫 | 胃,腸,腸間膜リンパ節など | 嘔吐,下痢,食欲低下,体重減少 |
縦隔型リンパ腫 | 胸腺,縦隔部,胸骨部リンパ節 | 呼吸があらい,開口呼吸 |
多中心型リンパ腫 | 体表リンパ節±腹部臓器 | 頭頸部のリンパ節の腫大 |
鼻腔内リンパ腫 | 鼻腔内 | 鼻汁,呼吸困難,鼻出血,いびき,顔面変形 |
腎臓型リンパ腫 | 腎臓 | 腎不全症状(多飲・多尿,脱水など) |
脊髄のリンパ腫 | 脊髄 | 後肢麻痺 |
【治療と予後】
治療は多剤併用化学療法です.多剤療法化学療法とは,作用機序の異なる抗がん剤を組み合わせる治療方法であり,①相乗作用が得られること,②腫瘍細胞の薬剤耐性を軽減する,③副作用が軽減できる,などが期待できます.
多剤併用化学療法を行っても,犬に比べ反応性が悪いことが多く生存期間の中央値は平均7〜8カ月とされています.(無治療の場合は1カ月くらい)
なかでも,①ステージやサブステージ(腫瘍の広がり),②解剖学的な発生部位,③治療に対する反応,④FeLV感染の有無によって予後が大きく左右されます.