
動物の病気について
animal diseases
〔眼科〕犬の潰瘍性角膜炎
【角膜潰瘍と診断したら・・・】
①角膜潰瘍の原因 ②潰瘍の深さ ③感染の有無 を評価します.
① 角膜潰瘍の原因は,大きく内因性と外因性に分類されます.
内因性として,涙液異常(涙液減少症,涙液膜異常など),まぶたの異常(異所性睫毛,眼
瞼内反症,眼瞼腫瘍など),神経麻痺(第5,7脳神経異常)などが挙げられます.
外因性としては,外傷,異物,猫に特有のヘルペスウイルス感染症などが挙げられます.
② 次に,潰瘍の深さを評価します.
角膜は,角膜上皮層,角膜実質層,デスメ膜,角膜内皮細胞の4層から構成され,
角膜の傷の深さによって,GradeⅠ〜Ⅲに分類します.
GradeⅠは角膜上皮層,GradeⅡは角膜実質層,GradeⅢはデスメ膜あるいは角膜穿孔に至
った状態をさします.
③ 次に感染の有無を評価します.
角膜潰瘍が存在する場合には,細菌などの感染の有無を評価することが非常に大切です.
角膜に感染があると急速に角膜融解が起こるため,早期に適切な抗生剤を使用する必要が
あります.
【角膜潰瘍の治療は・・・】
上記の分類により,角膜潰瘍の治療方針をたてていきます.
感染(主に細菌感染)が+の場合には,積極的な抗生剤点眼,場合によっては抗生剤の全身投与を行います.
感染が落ち着いたところで,傷の修復をサポートする治療を考えていきます.潰瘍病変が浅い場合には,点眼治療(ヒアルロン酸ナトリウム)やコンタクトレンズ装着などを行います.傷の深さによっては,点眼治療で角膜の再生を待てない場合もあります.その場合には,眼瞼縫合や結膜被覆,角膜移植を行う必要があります.
最後に,角膜潰瘍の原因に対する治療(涙液異常に対する治療や,瞼の形成外科など)を行います.角膜潰瘍を再発させないためには,根本的な原因を解決することが大切です.