脳腫瘍 - 千葉seaside動物医療センター|習志野市津田沼の動物病院(千葉シーサイド)

脳腫瘍

神経科 大﨑 統雄

獣医領域でのMRI、CTの普及により脳腫瘍の診断率はかなり向上してきました。ある統計によると犬の脳腫瘍の発症率は人間よりも何倍も高いそうです。そう考えると決して対岸の火事ではありません。

脳腫瘍には大きく分けると3種類あります。一番一般的なのは脳実質自体の腫瘍、脳周囲にある組織が腫瘍化し脳を圧迫する腫瘍、そして他臓器腫瘍が脳への転移です。

発症は、年齢ともにリスクは上がります。ほとんどの場合では5歳以上と言われています。犬では9歳半、猫では11歳で最も多く診断されているというデータがあります。

脳腫瘍の特異的な神経徴候は無く、多岐に及びます。腫瘍が発生した部位によっても全く異なります。例としては発作、知性/行動の変化、徘徊、旋回、虚弱、転倒、平衡失調、失明が挙げられます。一般的にはこれらのうち1〜2つが発症しますが、他の神経徴候に進展する可能性は比較的稀です。

診断に最も適しているのはMRIですが、残念ながら腫瘍の種類までを正確には分類することは困難なのが現状です。人間では脳生検を行い病理検査や予後の判定を行いますが、獣医領域ではまだ一般的ではありません。実施することは可能ですが、侵襲性が高くリスクも高いため通常であれば推奨されていません。よって獣医領域ではMRI所見などの手がかりから腫瘍のタイプを診断することを基本としています。同時に脳以外に腫瘍が無いかを他の検査で見極めることも必要不可欠です。

脳腫瘍の治療は、基本的に緩和療法と根治的治療に分けられます。前者が発作などの神経徴候を抑えることと、腫瘍周辺の浮腫をステロイドなどで減少させることです。後者が外科、放射線、抗がん剤です。臨床的にはまずは緩和療法が行われます。例えば、発作が起きた場合にそのコントロールは優先されます。二次診療施設も増え、近年では脳外科の選択肢が身近になってきました。しかし発生部位や腫瘍の種類によっては手術が適応外になることも少なくありません。さらには全てを取り除き根治させることはほぼ不可能です。そのため放射線治療や抗がん剤治療を併せて実施することにより、より高い治療効果が得られることが期待されることもあります。腫瘍のタイプによっては放射線のみが適用になることもあります。抗がん剤のみが顕著に奏功する実質性腫瘍はかなり少ないです。これら3つの治療法を選択し、さらには組み合わせるかは慎重に決める必要があります。神経徴候の重篤度、脳腫瘍の画像所見、動物の一般状態、飼い主さんの倫理観、獣医師の采配・・・全てを鑑みてベストと思われる指針を立てることが一番の治療だと考えます。

投稿者プロフィール

大﨑 統雄
大﨑 統雄 Norio Osaki (神経科)
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